飛騨高山の山間にある家具工房 雉子舎。
木が生きる過程で生み出した天然のデザイン。
雉子舎では、その木目や色味、節など、木の個性を活かした家具づくりをしています。
飛騨地域は日本でも有数の家具の産地。
山に囲まれた盆地ですが、大手から中小企業に個人の作家さんまで。
幅広く家具づくりや木工が盛んな地域です。
(雉子舎は、飛騨木工連合会に所属し「飛騨の家具Ⓡ」、「国産家具」を名乗れる基準を満たした認定企業です。)

少し前のお話しになりますが、お客様から修理についてご連絡がありました。
変色してしまった表面を直したいとのこと。
メンテナンスについてお問合わせ頂くこともあるので、今回の内容をご紹介します。
クリのテーブル天板

今回は、クリ材のブックマッチテーブルの天板。
上の写真はメンテナンス前のものです。
スリットブックマッチテーブルⓇの天板で、サイズはW1800。
全体に白くムラが出来ているのが分かります。

実は、ご家族が間違えて強力な洗浄剤で拭いてしまったとのこと。
ご連絡をいただいた際には、ショックを受けたご様子でした。
テーブルを見れば伝わってくる。
長年使い重ねた経年変化の様子。
日常の一部になっていたテーブルなのだと伝わってきました。

クリ材の特性
クリは”タンニン”を含む木のため、鉄分やアルカリ成分を含んだ水分と反応して変色することがあります。
そのため、成分が反応して変化してしまうと、拭くだけでは落とすことが出来ません。
ただ、そういった反応をしてしまった場合でも、表面を削って変色した箇所を落としてきれいにすることが出来ます。
勿論小さい範囲であればご自身でメンテンナスすることも可能です。
今回の場合は、変色箇所が全面に渡るため、表面の変色した分を均一に削って再度仕上げることになりました。
メンテナンス前後
Before

After

耳部分にあったささくれも、今回のメンテナンスできれいにしました。
どの箇所にあったのか、すっかり分からないくらいに。
Before


After

写真の撮り方が同じでないため分かり辛いですが、まだらだった表面がきれいになり、元の木目が分かるようになりました。
今回は通常のオイル仕上げから、ポアオイル仕上げに変更となっています。
”仕上げ”の選択肢
雉子舎での仕上げは基本はオイル仕上げです。
ですが、「なかなか自身でメンテナンスが出来ない」、「水拭きを毎日したい」という方もいらっしゃいます。
そういった方には、ポアオイル仕上げがお勧めです。
「合成樹脂の水に強いところ」と、「表面に膜を作らず浸透するため木の手触りが活きる」。
オイルとウレタンのいいとこ取りです。
ポアオイルはウレタン樹脂を含んだオイルで、通常のオイルよりも耐水性があります。
そのため、水にちょっとくらい濡れただけでは染みができないので、普段から水拭きをしていただけます。
デメリットとしては、仕上げ後には重ね塗りが出来ない事。
ちょっとした凹みや傷のメンテナンスの際にも表面を全て削っての再塗装をします。
また、ご自宅では取り扱いにくいオイルのため、部分メンテナンスでも弊社にお送りいただくことになります。
メリット、デメリットを知ったうえで、ライフスタイルに合った仕上げをご検討いただければと思います。
メンテナンスの選択肢
ちょっとしたことなら、自身で手を入れることが出来ます。
ですが、広範囲となるとご自宅でのメンテナンスは難しいのも確か。
使うなかで生まれる傷や染みも思い出の一つ。
積み重ねた時間と記憶そのものであったりします。
そのため、全面を削ることはお客様からのご希望でない限りは行いませんが、
こうしてダメージを負った表面を削り、きれいに出来るのは無垢材だからこそ出来る修理です。
保証対象外の内容であっても、弊社でご購入いただきました製品であれば、有償にてメンテナンスを承っています。
気になる方は、CONTACTフォーム からどうぞ。
ご自身で行うメンナンス
12月ということで、年末に向けて大掃除をされるなかで、大掃除のタイミングで無垢のテーブルをメンテナンスされる方も多いのではないでしょうか。
今回の件は、強力な油落とし用の洗剤を使ってしまわれたため、変色した事例となります。
樹種によって、アルカリに弱いもの、酸に弱い等の違いもあり、成分の濃度でも変色の度合いは異なります。
複数の人で囲むダイニングテーブルは様々な汚れができやすいのも事実。
オイル仕上げ製品の場合
雉子舎の製品は基本的にはオイル仕上げです。
クエン酸や重曹をお掃除に使われる方も多いですが、変色の原因になる可能性もあります。
そのため、「汚れを落としたい」と思った時。
まずぬるま湯で固く絞った布巾で拭いてみてください。
水分による輪染みや、ちょっとした汚れならこの段階で落とせます。
これで落ちない場合には、油分を含む汚れか変色の可能性があります。
油分を含む汚れの場合、台所用洗剤(中性のもの)を追加で用意します。
200 倍程度(1L に対して5cc ほど)に薄めたぬるま湯で、固く絞った布巾で拭いてみてください。
拭いた面を自然乾燥させ、オイルを塗っていただければメンテンナス完了です。
落ちない場合は変色の可能性があります。
より強力な汚れや色素沈着、もしくは木部の変色当の可能性があります。
その場合は”染み”の落とし方として、以下のページを参考に落としてみてください。
削った箇所の色味の違い
部分的に染みを直した場合。
メンテナンス直後は、削って出てきたきれいな面と経年変化をした他の部分の色味が異なります。
変化した表面を落としているためなので、使い込んだ物ほど色味の違いは顕著です。
ですが、使っている内に徐々に馴染んでいきます。
全く同じにすることは難しいですが、ぼかすように周りを削るとより馴染みやすいです。
確かに水に弱く、水染みができやすい等の短所もあります。
ですが、自身でメンテナンスがしやすいのも魅力の一つ。
一気にきれいにしようとするとなかなか大変です。
その時々で、きれいにしたり、そのまま残したり。
小範囲で手を入れながら、無垢の木のメンテナンスを楽しんでお使いいただけましたら幸いです。